失語症学の発展に向けて

言語聴覚士に役立つ書籍や考え方を紹介していきます

言語聴覚士 スキルアップ資格6選

言語聴覚士(以下ST)は、国家試験に合格し免許を取得することで従事できます。そして、一度取得すればその後更新の必要はありません。つまり、国家試験にさえ合格してしまえば、仕事をするのにスキルアップは不要です。スキルをいくら上げても、それによる給料アップはほとんど見込めないでしょう。コスパを考えれば、免許取得後にスキルアップをしようとするのは良策ではありません。

その上で、私が今まで取得してきたSTスキルアップ資格をあえて紹介していきます。今回は簡単な紹介になりますが、今後、取得した経験を含めて詳細をお伝えできればと思っています。

 

①認定言語聴覚士(摂食嚥下障害、失語・高次脳機能障害、言語発達障害、聴覚障害、成人発声発語障害)

日本言語聴覚士協会が主催しているものです。STのスキルアップ資格として最も評価されるものです。2021年3月現在の認定言語聴覚士修了者数がST協会から発表されていたので紹介します。

摂食嚥下障害領域・・・394名

失語・高次脳機能障害領域・・・275名

言語発達障害領域・・・47名

聴覚障害領域・・・48名

成人発声発語障害領域・・・42名

STの有資格者は34000名でそのうち認定STは806名なので、全体の約2.4%になります。

協会によると今後、認定STの上位資格の設置も検討しているとのことです。

 

②日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士

日本摂食嚥下リハビリテーション学会が主催している資格です。摂食嚥下に関わる臨床や研究をされている方なら受験できるため、歯科医師、歯科衛生士、栄養士の方などST以外も取得されている方が多くいます。嚥下訓練機器の営業をされていた方でこの資格を持っていた人もいました。

先ほど紹介した認定STの摂食嚥下領域を取得された方なら、試験を受けなくても申請するだけで取得可能です。私は、失語・高次脳領域の認定STだったので、試験を受けて合格しました。

2021年3月現在、3349名の有資格者がいます。

 

③ディサースリア認定セラピスト

日本ディサースリア臨床研究会が主催している資格です。最近できたものなので、STの中でも知らない方が多いのではないかと思います。

これは、ディサースリアの評価手技と治療手技について一定水準に達したことを保証するもので、講習会に参加することで取得できます。2021年3月現在で92名です。

養成校でも習うディサースリア検査をより細かく知ることができ、西尾正輝先生が考案された発話と嚥下の運動機能向上プログラム(MTPSSE)を実技を交えて学ぶことができます。

 

④LSVT−LOUD認定資格

LSVTとは、リー・シルバーマン法というアメリカのRamigらが考案した主にパーキンソン病に対するリハビリ手法の一つです。LSVTには、LOUDとBIGの2種類あり、LOUDは発声発語明瞭度改善目的の訓練法で言語聴覚士が行うもので、BIGは身体運動に対する訓練法で理学療法士、作業療法士が行います。

LSVT−LOUDは言語療法の中でもエビデンスレベルが最も高いものです。そしてLSVTとして治療するためには講習会に参加し資格を取得した者に限られ、方法も厳格に決められています。世界各地で講習会が行われており、日本では7回程度講習会が開催されています(2021年3月現在)。

 

ここからは資格ではありませんが、講習会に参加することで修了証をもらえるものを紹介していきます。

 

⑤STのためのインフォメーション講習会(ボバース)

日本ボバース研究会が行っている講習会です。4日間講習会に参加することで修了証をもらえます。

ボバースは理学療法、作業療法の分野では有名ですが、ST分野ではほとんど知られていません。講習会は実技中心で行うため、臨床で役立つ内容を教えて頂けますが、教わる内容も多く覚えるのが大変です。STがボバースを学べる場所は限られていますが、京都にあるKNERC(ネルク)では、ST限定のボバース講習会も行っているのでそれに参加するのもいいと思います。こちらは身体機能面のアプローチが主なので嚥下発声などのST領域については深くは学べませんが、ボバースの基礎を学ぶには最適だと思います。少人数で実技多めです。

 

⑥認知神経リハビリテーション学会ベーシックコース、アドバンスコース

先ほど紹介したボバースと同じく理学療法、作業療法分野では有名ですが、STで知っている人は少数派です。以前ブログでも失語症治療の一つとして紹介しました。

コースがベーシック、アドバンス、マスターの3つに分かれており、各コース受講すると修了証を頂けます。マスターコースまでいくと認知神経リハビリテーション士と名乗れるようですが、私はアドバンスコースまでしか参加したことはありません。マスターコースは認知神経リハビリテーションの発祥の地であるイタリアまで研修に行かなければならず少しハードル高めです。STでマスターコースに参加したことがあるのは、学会関係者から聞いた話によると10名いないと思います。

ベーシックコースでは、ST限定の講習会が年一回程度開催されていますが、アドバンスコースは理学、作業療法中心の話になります。一見STには必要ないように感じますが、認知神経リハビリテーションの基礎の部分を知るためには参加する価値はあると思います。

 

以上6つ紹介していきました。他にも私は持っていませんが、臨床神経心理士という資格が新設されています。スキルアップはコスパが悪いと最初に書きましたが、これは現時点での見解です。今後、医療保険・介護保険制度の改定により、言語聴覚士の資格を持っているだけでは不利になる状況が来るかもしれません。それに備えるためにも今のうちからコツコツ学んでいく必要があると思っています。