失語症学の発展に向けて

言語聴覚士に役立つ書籍や考え方を紹介していきます

失語症治療のアプローチ方法8 〜認知神経心理学的アプローチ〜

認知神経心理学的アプローチは、主に言語機能の修復や再編成を目指す治療法です。

本邦の失語症治療で現在最も利用されている訓練法の一つです。

認知神経心理学は、Marshallら(1966,1973)による読み書き患者に関する二本の論文が起源です。読み障害のある患者には質的に異なるパターンがあり、それらをひとまとめにしてしまうとその違いが見えにくくなることに気づいたことがきっかけとなり発展していきます。そして読み障害から様々な領域に広がっていきました。

 

脳病変患者の誤反応をもとに単語や構文を処理する過程をモデル化することを試みられています。このうち失語症治療で主に用いられているのが単語の情報処理モデルであり、その中でもロゴジェンモデルが有名です。

ロゴジェンモデルとは、「箱」と「矢印」で示されたものです。”logogen"とは、ギリシャ語が起源とする「logo(ことば)」と「gen(〜を生じるもの)」からなる造語です。

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Pattersonら(1987)のロゴジェンモデル

 

この訓練法の特徴の一つが、一人ひとりの患者の症状を情報処理モデルに基づいて分析し、どのような機能や過程が障害・保存されているかを評価し、その機能や過程を賦活や再編成する方法を考察するところにあります。

そのため、ブローカ失語やウェルニッケ失語などの失語症のタイプ別に訓練方法を決めず、患者ごとに訓練のターゲットや方法を選択します。そのため、訓練方法は多岐にわたります。

 

 認知神経心理学的アプローチをより知りたい方は以下の二冊がオススメです。 

言語聴覚士の養成校でより使用されている教科書です。認知神経心理学的アプローチがわかりやすく書かれており、初学者に最適です。

 

 

より詳しく学びたい人向けです。460ページとボリュームがあり、通読するよりは辞書代わりに使用するのが良いと思います。

今回は概要だけを書きましたが、今後、具体的な評価・訓練方法も載せていきたいと思っています。