失語症学の発展に向けて

言語聴覚士に役立つ書籍や考え方を紹介していきます

言語は空間の一部である 

エドワード・ホール著の「かくれた次元」に興味深いことが書かれていたので紹介したいと思う。

虹の色が文化によって違うことは知っている人も多いだろう。日本だと7色、アメリカは6色、南アジアのバイガ族は赤と黒の2色で認識するらしい。

「雪」という言葉も、英語とエスキモー語では語彙数が異なり、文化と言語は親密な関係がある。

言語学者のワーフは以下の言葉を残している。

「いかなる人も自然を完全に無色透明に叙述することはできない。自分がきわめて自由だと思っている時でさえ、ある型の解釈を押し付けられているのである」

ワーフは、北アマゾンの砂漠地卓に住むインディアンの言語であるホピ語研究を長年にわたって行った。ホピ語の時間・空間概念を理解し始めたとき、あることに気づいた。それは、ホピ族には「time」に当たる言葉がなかったのである。時間と空間が一体となっており、時間の次元を消去すると空間の次元も変化する。ワーフはいう「ホピ族の思考世界は想像的空間を持たない。現実の空間を現実の空間以外のところに位置づけることができないし、思考の構造物から空間だけを取り出すこともできない」すなわち、天国や地獄などの非現実的な想像(抽象的想像)をすることができないのである。

 

このように、空間と言語は一見異なる要素のように思えるがきわめて親密な関係であることがわかる。

右脳が障害されると半側空間無視、左脳が障害すると失語症が現れるが、言語を空間の一部と捉えれば、失語症は言語という次元の空間障害と言い換えられるかもしれない。

全体構造法の身体リズム運動を失語症者にしてもらうと、失行検査で問題なくても見本通り運動することができない場合が多い。そのような現象は、言語という空間が障害されているからかもしれない。

 

 

かくれた次元

かくれた次元