失語症学の発展に向けて

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失語症治療のアプローチ方法7 〜CIAT〜

PACEに関連した訓練方法としてCIセラピーの理論を失語症に応用したCIAT(CI aphasia therapy)というものがあります。

CIセラピーは、健側の上肢の使用を制限して麻痺側上肢を強制的に使用させる作業療法士が用いる手技の一つです。

また、言語聴覚士(以下ST)が行うCIセラピーとして、顔面神経麻痺により顔面筋・表情筋の可動域制限のある患者に対して、健側の使用を制限し、患側に集中的に運動を行わせることで筋収縮を改善させ、運動範囲を拡大させようという方法もあります。

失語症に用いるCIセラピーは、可能な限りジェスチャーや指差しなど代償手段の使用を制限して、失語症者の状況に応じて最大限の口頭表出を求めることを集中して行うものです。

 

訓練方法

①対面に座る2人の失語症者に同じカードのセットを渡し、2人の間にスクリーンを置いて互いに相手の絵カードが見えないようにする

②一方の失語症者が相手にカードの物品を口頭で要求する(例:「〇〇さん、私に〜を下さい」)伝達手段は発話に限定

失語症者のレベルに合わせて使用する刺激の種類、課題文の長さを調整する

 

CIATは、対話による伝達訓練という共通点はありますが、PACE訓練があらゆる手段を積極的に勧めることを原則にしているのに対し、CIATは伝達手段を発話に限定しているところが異なる部分です。

 

CIATとPACEを集中して実施した結果を比較するとCIATでより改善が大きかったという報告があります。しかし、Pulvermuller(2001)の研究では、1日3時間を10日間 訓練を実施しており、我が国の医療保険制度で毎日3時間の失語症のリハビリを実施していくことは難しい面もあり、実際に訓練として用いているケースは少ないように感じます。