失語症学の発展に向けて

言語聴覚士に役立つ書籍や考え方を紹介していきます

失語症治療のアプローチ方法6 〜PACE〜

PACE(promoting aphasics communicative effectiveness)訓練は、日常コミュニケーションに近い場面を設定し、自然なコミュニケーションに含まれる手段や条件を活用し、対話形式を重視するものとして開発されたものです。

 

PACE訓練の原則として以下の4つがあります。

言語聴覚士(以下ST)と患者がメッセージの受け手と送り手として情報伝達に対等な立場で参加する

②新しい情報の交換により治療関係が成立する

③患者はメッセージの伝達手段を発話、書字、ジェスチャー、指示、描画など自由に選択できる

④STのフィードバックにより、自分がどの程度情報を伝えることができたかを知ることができる

 

訓練方法

①伝達課題の絵カードを複数枚用紙して机上に裏返しに置く。

②患者とSTが交互にカードを取り、引いたカードの情報について情報の送り手と受け手になって伝達し合う。伝達手段は、発話、描画、物品指示、ジェスチャー、書字など自由に選択して情報を伝える。情報の受け手であるSTは、わかりづらいところを自然な反応として質問する。

③情報が伝達された後、「〜ですね」など適切に伝わったことをフィードバックする。

④送り手と受け手を交代し、同様に行う。

 

評価方法

0〜5の6段階で評価を行うことで、情報伝達効率を評価することができます。

評価点5:最初の試行でメッセージの伝達が可能

評価点4:一般的なフィードバックの後に、メッセージの伝達が可能

評価点3:特別なフィードバックの後にメッセージの伝達が可能

評価点2:一般的かつ特別なフィードバックの後にメッセージの一部の伝達が可能

評価点1:互いの努力にもかかわらずメッセージの伝達ができない

評価点0:メッセージの伝達の試みがみられない

*患者が送り手の場合は上記の通りで、受け手の場合は「伝達」を「理解」に置き換えて評価する。

 

この評価により、表出時と理解時の差、課題(物品の説明、事象の説明など)による差を比較することができ、治療プログラムや治療効果を検証する際に役立ちます。