失語症学の発展に向けて

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失語症治療のアプローチ方法5 〜意味セラピー〜

失語症の呼称障害に対して意味的な課題を用いた治療的介入を意味セラピーと言います。

 

意味セラピーの訓練として以下のものがあります。

1.音声と絵の照合課題:音声で提示された単語に対応する絵を意味的に関連する複数枚の絵の中から選ぶ

2.文字と絵の照合課題:文字で提示された単語に対応する絵を選択する

3.意味判断課題:単語の意味に関する質問に「はい」「いいえ」で答える

 

意味セラピーの対となる訓練として音韻セラピーがあります。音韻セラピーは、絵を提示し言語聴覚士が音声を言って、相手に復唱を求め呼称につなげるという復唱的呼称課題が代表的な方法です。

どちらも呼称の正答率は改善しますが、意味セラピーは訓練で用いていない単語に対しても効果があるとされています。また、音韻セラピーよりも誤る頻度が少ないため、誤りなし学習としての利点もあります。(誤りなし学習:誤りが起きないように配慮した方が学習の効果が有効であるというもの)

 

一見すると、意味セラピーの方が有効な訓練のように思えますが、失語症者によって原因は様々あり、一様に意味セラピーをすればいいという訳ではありません。一人ひとりの症状に合わせて、音韻セラピーも取り入れながらリハビリをすすめていくことが必要です。