失語症学の発展に向けて

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数をこなせばよくなるか? 桑田流練習法から考える

巨人で活躍されていた桑田真澄さんが、ピッチャーの打撃練習の取り組み方について興味深いことを話されていました。桑田さんは、ピッチャーとして優秀な成績を収めていますが、バッターとしても投手による打率ランキングで歴代1位とのことです。

ピッチャーである以上打撃練習に割く時間は限られています。桑田流の打撃練習は、打球方向・角度を宣言して打つというものです。例えば、一塁方向にゴロを打つ、センタにフライを上げるなどです。宣言した通りに打てなければ試合では使えず、ただ闇雲に1000本素振りするべきではないと言われていました。

 

リハビリでも同じことが言えると思います。リハビリに熱心で書けない文字をノートにびっしり何度も書いている方を見かけることがあります。これだけ熱心に取り組んでいるのだから症状が良くなるのではと思うのですが、実際はあまり変わらないことが多いです。これは、先ほどの1000本素振りと似ています。ただ闇雲に量をこなせばいいというものではありません。何かを行う前に一度頭の中でシミュレーションし、実際に行った行為と予測したものが一致しているかどうか検討する。ビジネスでよく使われているPDCAサイクル(計画、実行、検証、改善)でリハビリを行うことが大切です。一方で、情報処理を速くする目的であれば次々と数をこなす練習が有効です。

 

例えば、呼称訓練を行う場合、目的に応じてやり方が異なります。

正確に言うことに重きを置いているのなら、一度頭の中で復唱してそれから言葉を発するというやり方がいいかもしれませんし、正しく表出できるが表出までに時間がかかる場合は、素早く何度も反復して呼称訓練を行うやり方が有効かもしれません。

根本的な原因が何かを捉えてそれに対してリハビリ内容を検討する必要があります。